スキー場の魅力を語るとき、私たちは雪質やコース、眺望に目を向けがちだ。しかし、実際に旅行者が最初に判断しているのは、もっと手前にある。
「無理なく行けるか」「総額はいくらか」「帰るまで快適か」——トラベルインがスキー・スノーボードツアー利用者1,881人を対象に実施した調査からは、いまの雪山旅行で選ばれる条件が鮮明に見えてくる。
本稿では、発表された数字を紹介するだけでなく、一般の利用者がツアーを選ぶ際のポイントと、スキー場・旅行事業者がこれから磨くべき体験を、SNOW MAKING編集部の視点で読み解く。

まず押さえたい4つの数字
- スキー場選びで「アクセス」を重視:78.0%
- ツアー選びで「価格」を重視:91.8%
- 宿泊先選びで「温泉」を重視:75.0%
- 「また利用したい」と回答:約93%
調査はトラベルインのツアー参加者を対象にした自社アンケートであり、日本の全スキーヤー・スノーボーダーを代表する統計ではない。その前提は必要だが、実際に旅行商品を購入し、雪山へ出かけた1,881人の回答には、来場につながる具体的なヒントが詰まっている。
スキー場選びの1位は「アクセス」——雪質だけでは選ばれない
スキー場選びで重視された項目は、アクセス78.0%、雪質54.2%、コース数50.2%、施設34.6%、レンタル設備やキッズパークなど23.1%だった。
もちろん雪質やコースは重要だ。ただし、来場前の段階で立ちはだかるのは移動である。早朝の運転、雪道への不安、乗り換え、荷物、帰路の疲労。魅力的なゲレンデであっても、行き方が分かりにくい、時間が読めない、帰りがつらいとなれば、候補から外れやすい。
ここでいうアクセスは、単なる最寄りインターチェンジからの距離ではない。予約画面から現地到着までの分かりやすさ、バス停の位置、荷物の扱い、交通障害時の案内、帰路の選択肢までを含む「ドア・ツー・スノーの体験」と考えるべきだろう。
スキー場側にとっては、雪を変えることよりも、アクセス情報の見せ方を変える方が早く着手できる場合もある。「東京から○時間」だけでなく、出発時刻、休憩、到着後の導線、レンタルまでの所要時間を具体的に示す。これだけでも、初めての人が感じる心理的な距離は縮まる。
「価格」91.8%が意味するのは、安さだけではない
ツアー選びでは価格が91.8%で最多となり、スキー場77.5%、宿泊施設49.5%、レンタル内容36.7%、現地滞在時間24.0%と続いた。
ただし、価格重視を「最安値だけが勝つ」と読むのは早い。利用者が知りたいのは、交通、リフト券、宿泊、レンタル、補償などを含めた最終的な支払額と、その内容だ。予約時は安く見えても、現地で追加料金が重なると満足度は下がる。
トラベルインは2026-2027シーズン、レンタルをサービス・スタンダード・プレミアムの3クラスに分けて内容を見える化し、原則としてレンタル物損免責補償料を旅行代金に含める方針を打ち出した。これは値下げではなく、「何が含まれているか分からない」という不安を減らす設計である。
スキー場や旅行事業者に求められるのは、入口価格を低く見せることだけではない。追加費用を含む総額、選択肢の違い、キャンセル条件まで、比較しやすい形で提示することだ。価格の透明性そのものが、信頼をつくる。
温泉75%——滑走後までがスキー旅行の商品
宿泊先選びでは価格87.8%に続き、温泉75.0%、食事62.2%が重視された。ここから見えるのは、利用者が買っているのは「滑走時間」だけではないということだ。
冷えた身体を温め、家族や仲間と食卓を囲み、翌日に疲れを残さない。温泉や食事は付帯サービスではなく、雪山旅行の満足度を完成させる重要な工程である。

スキー場単体ですべてを抱える必要はない。周辺温泉、宿、飲食、交通と連携し、「滑った後に何を楽しめるか」を一つの旅程として見せることが地域全体の単価と滞在時間を伸ばす。日帰り客にも、入浴券付き商品や帰路前の休憩プランなど、体験の余白を商品化できる。
家族利用39.2%——来場体験は出発前から始まっている
参加形態では家族が39.2%で最多、友人32.8%、一人15.0%、カップル8.0%となった。ファミリーにとって、スキー旅行は人数分のウェアや用具、食事、休憩、子どもの体調まで考える必要がある“大きな移動”だ。
そのため、家族向け集客ではキッズパークの有無だけでなく、予約から帰宅までの負担をどこまで減らせるかが重要になる。たとえば、バス乗り場の分かりやすさ、子ども用レンタルの在庫表示、着替えスペース、休憩場所、食事の選択肢、初級者エリアまでの導線。こうした細部が「また行ける」という感覚をつくる。
満足度の高いツアーは、次の冬を連れてくる
「またトラベルインツアーを利用したい」と答えた人は、「ぜひ利用したい」48.2%と「利用したい」45.5%を合わせて93.7%に達した。項目別の満足度も、スキー場95%、バス91%、宿泊85%、レンタル80%と高い。

ここで注目したいのは、再来訪を生むのがゲレンデ単体の満足だけではない点だ。交通、宿泊、レンタルを含む一連の体験がスムーズだったからこそ、「次も行こう」が生まれる。集客施策は初回予約の獲得で終わらず、帰宅までの体験を設計して初めて完成する。
2026-2027シーズン、旅行商品はさらに柔軟に
トラベルインは2026-2027シーズン、全国63スキー場の商品を順次展開する。あわせて、往路はバス・復路はJR、またはその逆を選べる組み合わせ商品を用意。大阪・京都から北志賀、斑尾、戸狩方面へ向かう直行バスも一部日程で新設するという。

往復を同じ交通手段に固定しない発想は、アクセス重視という調査結果への具体的な回答だ。行きは眠って移動できる夜行バス、帰りは時間を読みやすい鉄道——利用者が体力や予定に合わせて選べれば、雪山旅行のハードルは下がる。
また、年末年始の宿泊プランやLINE友だち向けクーポンも案内されている。割引条件や対象商品、併用可否は変更される場合があるため、予約時には必ず公式サイトで最新情報を確認したい。
利用者が予約前に確認したい4項目
- ドア・ツー・スノーの時間
自宅を出てから滑り始めるまで、帰宅までを含めて比較する。 - 旅行代金の総額
リフト券、レンタル、補償、食事、入浴、現地交通の追加費用まで確認する。 - 滑走後の回復環境
温泉、休憩、食事、着替え、帰りの待ち時間を見落とさない。 - 同行者に合う導線
子ども、初心者、用具を持たない人が無理なく動けるかを見る。
SNOW MAKINGの視点——売るべきは「リフト券」ではなく、一日の安心
今回の調査が示す最大のポイントは、スキー場の競争力が雪上だけでは決まらないことだ。雪質やコースは核であり続ける。しかし、来場を決めるのはアクセスと価格の分かりやすさであり、再訪を決めるのは交通・宿泊・レンタルを含む総合体験である。
日本のスキー産業には、すでに良い雪と多様な山がある。次に磨くべきは、それらへ迷わず、安心してたどり着ける仕組みだろう。
「行ってみたい」を「予約できる」に変え、「楽しかった」を「また行こう」につなげる。旅行会社、交通事業者、宿泊施設、地域、スキー場が同じ旅程を見ながら商品をつくることが、冬の来場者を増やす現実的な一歩になる。
調査・商品情報について
本稿は、T-LIFEホールディングス株式会社がPR TIMESで公表したトラベルインのスキー・スノーボードツアー利用者調査および2026-2027シーズン商品情報をもとに、SNOW MAKING編集部が独自に構成・分析したものです。調査データを利用する場合は「トラベルイン調査」と明記してください。なお、プレスリリース本文のシーズン表記と調査概要に記載された調査期間には差異があるため、本稿では公表された回答者数と各設問の数値を中心に扱っています。

