雪のない台北で、次の雪客が育っている――街の練習場とショップから見えた日本のスキー産業の入口

台北のiSKI屋内スキー練習施設で滑走する人々 地域・観光

雪が降る山から遠く離れた台北の街で、スキーやスノーボードの練習をする人がいる。ショップにはブーツや板が並び、次の日本行きを思い浮かべながら道具を選ぶ。台湾を訪れて実際にその光景に触れたとき、「雪がないから滑らない」という見方がひっくり返った。

都市の中で準備し、雪のある場所へ旅をする。そんな流れが育てば、日本のスキー場にとって台湾は、冬にたまたま訪れる旅行者の市場にとどまらない。雪山へ行く前からつながりをつくれる相手になる。

SNOW MAKING VIEW
雪のない街は、スキー産業の「入口」になり得る。
台北での練習・道具選び・仲間づくりと、日本の雪上体験を一本の旅として考えたい。
台北市内にあるiSKI滑雪学校の外観
台北の街にあるiSKI。雪山への入口は、ゲレンデの外にもあった。 撮影:SNOW MAKING編集部

最初の一本は、雪山ではなく街の中にある

台北で訪れたiSKIには、室内で滑走フォームを練習できる設備がある。写真に写る人の動きを見ていると、そこは単なる旅行前の体験スペースではない。上手くなるために何度も練習できる、生活圏の中の滑走拠点だ。

公式サイトによれば、iSKIは台湾各地で室内レッスンを行い、日本の越後湯沢で雪上レッスンも提供する。練習映像を使った振り返りや、初級から上級までの段階的な講習も紹介している。iSKI公式サイトを見る。

ここで興味深いのは、「旅行前に一度だけ練習する」では終わらないこと。台湾で始める→日本の雪で試す→帰国後に街で練習を続ける。この循環ができれば、年に数日の旅行だけだったスキー・スノーボードが、年間を通して関わる趣味になる。

iSKI施設内に並んだスノーボードブーツと用具
室内練習と道具選びが近い距離にあることも、都市型の拠点ならでは。 撮影:SNOW MAKING編集部

台北のショップで見えた「滑る前の時間」

雪山への旅は、空港に着いてから始まるわけではない。ブーツを履き比べ、板を眺め、次はどこを滑ろうかと話す。その時間そのものが、冬への期待を育てている。

訪れたALL RIDEの店内には、スケートボードやサーフの空気とともに雪の用具がある。公式サイトでもSKATE・SURF・SNOWを掲げ、スノーボード用ビンディングやグローブなどを扱っている。都市生活の中で横に広がるボードスポーツの文化から、雪山へ入っていく人もいるのだろう。これは現地の店づくりを見て感じた編集部の見方であり、購入者の行動を調査した結果ではない。ALL RIDE公式サイトを見る。

台北のALL RIDE店内に並ぶボード用品とゴンドラ型の展示
ALL RIDEの店内。街のボードカルチャーと雪山の道具が同じ空間で交わる。 撮影:SNOW MAKING編集部

ほかの店でも、板、ブーツ、ウェアがずらりと並んでいた。こうした現場を見ると、台湾からの来場者を「現地で一式を借りる初心者」とひとくくりにするのは、もったいないと思う。自分の道具を持つ人も、これから初めて選ぶ人もいる。必要な情報も違う。

台北のアウトドア用品店の店頭
台北には雪を扱うアウトドア用品店もある。商品との出会いは旅の前に生まれる。 撮影:SNOW MAKING編集部
台北の別のスノーボード用品店に並ぶ板とブーツ
別のショップにも板やブーツが並ぶ。写真だけで市場全体の規模は測れないが、現地の熱量は伝わってくる。 撮影:SNOW MAKING編集部

街で練習した続きが、日本の雪になる

SNOW SENSEI TRAINING CENTERでも、都市の中で滑りを磨く姿を見た。マシンの上で動きを繰り返す光景は、雪がなくても上達の時間を積み重ねたいという意志を感じさせる。

SNOW SENSEI TRAINING CENTERの入口
台北で訪れたSNOW SENSEIのトレーニング拠点。 撮影:SNOW MAKING編集部
SNOW SENSEIの屋内練習場で滑りを学ぶ人
指導者のそばで動きを確かめる。街での練習が、次の雪山に向かう準備になる。 撮影:SNOW MAKING編集部

関連するSnow Sensei Quest Academyの公式サイトには、2026/27シーズンの越後湯沢での中国語による雪上レッスンが案内され、岩原、石打丸山、神立、かぐらなどの雪場が紹介されている。台北の練習拠点を訪れた観察と、公式サイトに記載された日本側のプログラムは、同じブランドの活動として区別して見たい。Snow Sensei Quest Academy公式サイトを見る。

日本のスキー場が学べるのは、語学対応だけではない。旅行前に何を習い、現地では何を体験し、帰国後に何を目標にするか。一回の来場ではなく、次の上達までの道筋を一緒につくれるかどうかだ。

台湾からの訪日客が多い。それだけで雪客とは言えない

日本政府観光局(JNTO)は、2026年2月の台湾からの訪日外客数が、同月として過去最高だったと発表している。ただし、訪日客の総数が増えたことと、スキー目的の旅行がどれだけ増えたかは別の話だ。この統計だけで雪山への需要を推計することはできない。

それでも、台北の練習施設とショップ、日本での雪上レッスンという接点を一つずつ見れば、日本のスキー場が台湾の滑り手と出会える場所は、既に複数ある。市場規模を大きく見せるより、現にある導線を丁寧につなぐことから始めたい。

日本のスキー場は、どこを変えればいいだろう

台湾で撮った写真を見返すと、日本側に必要なのは「台湾向けの広告を増やす」だけではないと思う。都市の練習場で育った期待を、初めての雪上体験、再訪、上達へとつなぐ受け入れ設計である。

01|出発前
繁体字でアクセス、レンタルのサイズ、講習の予約方法を示す。練習施設やショップが紹介しやすい情報を整える。
02|雪山で
「初めて」と「街で練習済み」を分け、実力に合うレッスンとコースを提案する。交通と講習開始時刻もつなげる。
03|帰国後
写真や上達の記録、次に挑戦できるコースを届ける。翌シーズンの来訪理由をつくる。

提携先を探すなら、来場者数だけでなく、講習受講、再訪、宿泊、地域内の飲食や移動なども見たい。ただし台湾のすべての旅行者が同じ滑り方を求めるわけではない。初心者、親子、道具にこだわる人、フリースタイルを磨く人では、旅に期待するものが異なる。

ゲレンデを増やすことだけが成長ではない。海外の街で生まれた「滑ってみたい」を日本の山で受け止め、地域の宿や食事まで含めて良い一日にする。その体験が次の冬の約束になる。

雪のない街が、雪国の未来をつくる

台北の屋内練習場で滑る人、店でブーツを選ぶ人。その誰もが今すぐ日本のスキー場を訪れるとは限らない。それでも、雪に触れる前から冬への準備を楽しめる場所が街にあることは、日本のスキー産業にとって希望だ。

私たち雪国側は「滑りに来てください」と待つだけでいいのだろうか。街で続いている練習の、その先にどんな雪と人と地域が待っているか。そこまで伝えることができれば、日本のスキー場は一度きりの旅行先ではなく、上達と再会を重ねる場所になれる。

FROM TAIPEI TO THE MOUNTAIN
雪山の入口は、雪が降る場所だけにあるわけではない。
その入口と日本のゲレンデをどうつなぐか。次の仕事は、雪国にいる私たちの側にある。

参照情報

※施設情報は各公式サイトを2026年9月に確認。写真は筆者が台北で撮影したものです。写真に写る状況を台湾市場全体の統計として扱っていません。施設のサービス・営業時間は利用前に公式情報をご確認ください。

SNOW MAKING編集部

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SNOW MAKING編集部

SNOW MAKING編集部は、スキー場経営、雪づくり、索道・設備、人材、地域観光など、日本のスキー産業を支える現場の挑戦と技術を取材・編集しています。利用者と産業の双方に役立つ、正確で読みやすい情報発信を大切にしています。

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