雪がなくても、スキー産業は育てられる――相模原の新オフトレ施設がつなぐ都市と雪山

BOOKOFF SPORTS PARK SAGAMIHARAのスキー・スノーボードオフトレ施設 業界ニュース
雪が降らない季節にも、スキー産業の入口はつくれる。2026年8月、神奈川県相模原市に一年中滑れるオフトレーニング施設「BOOKOFF SPORTS PARK SAGAMIHARA」が誕生しました。これは競技者の練習場所というだけでなく、都市の生活圏と冬の雪山をつなぐ新しい拠点になり得る取り組みです。

「スキーやスノーボードは冬だけの遊び」。そんな常識が少しずつ変わり始めています。雪がない時期にも板を履き、滑る感覚を覚え、次の冬を楽しみに待てる場所が身近にあれば、ウィンタースポーツとの関係は季節限定ではなくなります。

今回の記事では施設の特徴を紹介するとともに、SNOW MAKING編集部の視点から、オフトレ施設がスキー場の集客や競技人口、地域との接点にどのような可能性をもたらすのかを考えます。

2026.8.6グランドオープン
相模原市首都圏から届く立地
一年中スキー・ボードを練習
世界初全滑走面SNOWTURF
BOOKOFF SPORTS PARK SAGAMIHARAの全景
大小のジャンプコースとエアマットを備えるBOOKOFF SPORTS PARK SAGAMIHARA。画像提供:ブックオフコーポレーション/PR TIMES

BOOKOFF SPORTS PARK SAGAMIHARAとは?

同施設は、株式会社ヴィジョナリーバンガードが開発し、相模原市を創業の地とするブックオフがネーミングライツを取得した屋外型のスキー・スノーボード練習施設です。初心者から競技者まで、雪のない季節にも継続して滑走やジャンプを練習できる環境を目指しています。

ブックオフはスポーツ用品のリユースだけでなく、アスリート支援や地域スポーツとの連携にも取り組んできました。今回は「用品を循環させる企業」と「滑る場所をつくる事業者」がつながり、スポーツを始めるきっかけそのものを地域に生み出した点が興味深いところです。

BOOKOFF SPORTS PARK SAGAMIHARA with yukiyama ロゴ
施設の愛称とロゴ。画像提供:ブックオフコーポレーション/PR TIMES

“雪に近い感覚”を目指したSNOWTURFを全面採用

大きな特徴は、次世代型の人工スロープ用ブラシ「SNOWTURF(スノーターフ)」を全滑走面に採用したことです。施設全体への採用は世界初と発表されています。

SNOWTURFは、従来のブラシ型人工芝と比べて自然な滑走感と高いエッジング性能を目指して開発されたもの。ジャイロテクノロジー社とプロスノーボーダーの岡本圭司氏が共同で参画し、2年以上のテストと改良を重ねたといいます。

人工滑走面SNOWTURFのブラシ形状
雪上に近いエッジングとコントロール性を目指したSNOWTURF。画像提供:ブックオフコーポレーション/PR TIMES
ここで一問。冬の初滑り、最初の数本を「感覚を取り戻す時間」に使っていませんか?オフシーズンにも板に乗る機会があれば、冬の入口は「思い出す日」から「すぐ楽しめる日」へ変わります。その違いは本人の満足だけでなく、雪山へ行く回数や新しい仲間を誘う気持ちにもつながりそうです。

初めての一歩から9mキッカーまで

施設は、初めて人工滑走面を体験する人やターン・グラトリを練習する人から、本格的なジャンプに挑戦する人まで、段階的に使える構成です。着地にはエアマットを採用し、レンタル用品も用意されています。

フリーゾーン全幅6.5m・全長31m(コースとエアマットを含む)。人工滑走面への慣れ、ターン、グラトリ、ジャンプデビューなどに。
スモールキッカー3m。初めてジャンプへ挑戦する人が、小さな成功体験を積み重ねる入口。
ミドルキッカー6m。ジャンプ経験者が新しい動きやフォームを反復する中間ステップ。
ビッグキッカー9m。より高いレベルを目指すライダーや競技者の実践的なトレーニングに。

なぜ「相模原」にあることが重要なのか

このニュースをスキー産業の視点で見ると、設備以上に立地が重要です。相模原市は首都圏の大きな人口を背景に持ち、高速道路からもアクセスしやすい地域です。雪山へ行くには早朝出発や長距離移動が必要な人でも、オフトレ施設なら仕事や学校、休日の生活動線に組み込みやすくなります。

STEP 1都市で体験する興味はあるけれど雪山は遠い、という人の心理的・時間的なハードルを下げる。
STEP 2上達と仲間を得る繰り返し通い、スクールや利用者同士の交流を通じて「続けたい」に変える。
STEP 3冬の雪山へ行く道具や技術への不安を減らし、実際のスキー場で試したいという動機を育てる。

つまりオフトレ施設は、スキー場の代替ではなく、雪山へ向かうまでの“助走路”です。首都圏の生活者と各地のスキー場が年間を通じて接点を持つためのハブとして考えると、その価値はさらに大きく見えてきます。

スキー場にとって、どんな連携が考えられる?

オフトレ施設の来場者は、すでに「滑ること」へ関心を持つ層です。スキー場側がこの接点を活用できれば、冬の広告を一方的に届けるよりも、自然な来場動機をつくれます。

連携のアイデア 利用者にとっての価値 スキー場側の可能性
冬前の共同イベント 雪上デビュー前に技術と持ち物を確認できる シーズン券、スクール、ツアーの認知を早期に獲得
スクールの相互送客 夏の練習と冬の実践を一つの上達ルートにできる 初回来場を継続客へ育てやすい
オフトレ利用者特典 冬の次の一歩を選びやすくなる 見込み客へ明確な来場理由を提供
ライダー・大会連携 憧れの選手や競技を身近に感じられる 若年層・ファミリーとの新しい接点
データ・アプリ連携 一年の滑走記録や成長を可視化できる 季節をまたいだ顧客関係を構築
冬の集客は、冬に始めなくてもいい。
多くのスキー場は秋以降に広告を強めます。しかし、利用者が「この冬は滑りたい」と思う瞬間は、春夏の練習、選手の活躍、仲間との会話の中にもあります。オフトレ施設と連携することは、年間を通じて需要を育てるマーケティングへの転換です。

オリンピックの熱を、一過性で終わらせない場所

スノーボードのハーフパイプやビッグエアは、オリンピックで日本勢が世界と競い、広く注目される人気種目です。プレスリリースでは、オープニングイベントに2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピック男子ハーフパイプ金メダリストの戸塚優斗選手らが参加したことも紹介されています。

テレビや動画で大きなジャンプを見た子どもが、「自分もやってみたい」と思った時、挑戦できる場所が近くにある。その環境は、競技人口を増やすうえで欠かせません。トップ選手の技を称えるだけでなく、初心者が3mのジャンプへ挑戦できる入口まで用意することで、憧れは初めて具体的な行動になります。

経営面で注目したい4つのポイント

季節変動を越える需要雪の有無に左右されず、練習・スクール・イベントを年間で組み立てられる。
複数企業の強みを組み合わせる施設開発、リユース、アスリート支援、アプリなど、単独では作りにくい顧客体験を共創できる。
都市近郊の反復利用宿泊を伴う観光だけでなく、日常的に繰り返し通うスポーツ消費を生み出せる。
競技者だけに閉じない設計初心者、子ども、家族、観覧者まで受け入れることが市場拡大の鍵になる。

もちろん、オフトレ施設にも安全管理、設備維持、人材確保、暑さ・天候対策、継続的な集客など課題はあります。オープンしたこと自体を成功と見るのではなく、初めて来た人が継続し、冬の雪山へ向かい、翌年また戻ってくる循環を作れるかが今後の注目点です。

斜陽と言われる産業にも、新しい入口はつくれる。スキー・スノーボード人口の減少や気候変動など、業界には厳しい現実があります。それでも、雪のない都市で一年中滑れる場所をつくり、企業や選手、地域が一緒に新しい参加者を迎えようとする動きがあります。私たちは、こうした挑戦を「一施設のニュース」で終わらせず、冬のスキー場や地域へつなげていきたいと思います。滑る人も、久しぶりの人も、これから始める人も。次の冬をもっと楽しむために、まずは身近な一歩から板に乗ってみませんか。
施設概要
施設名:BOOKOFF SPORTS PARK SAGAMIHARA
所在地:神奈川県相模原市緑区青山字川音1455
営業時間:平日13:30〜22:00/土曜・連休中日10:30〜22:00/日曜・祝日・連休最終日10:30〜19:00
定休日:毎週木曜日(祝日の場合は営業)
無料駐車場あり
※料金、営業日、利用条件などは変更される場合があります。来場前に公式サイトで最新情報をご確認ください。

出典:ブックオフコーポレーション株式会社「スキー・スノーボード練習施設『BOOKOFF SPORTS PARK SAGAMIHARA』が8月6日(木)相模原市に誕生」(PR TIMES、2026年7月31日)、株式会社ヴィジョナリーバンガードおよび施設公式サイトの公開情報。
本記事は公開情報をもとにSNOW MAKING編集部が独自に構成・要約し、スキー産業、集客・マーケティングの観点から分析を加えています。画像はプレスリリース配布素材を使用しています。掲載内容は2026年9月22日時点です。

SNOW MAKING編集部

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SNOW MAKING編集部

SNOW MAKING編集部は、スキー場経営、雪づくり、索道・設備、人材、地域観光など、日本のスキー産業を支える現場の挑戦と技術を取材・編集しています。利用者と産業の双方に役立つ、正確で読みやすい情報発信を大切にしています。

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