スキー場の営業開始日が決まれば、宿は予約を受け、スタッフは勤務を組み、滑り手は旅程を描ける。雪を確保する設備投資は、ゲレンデだけの問題ではない。エイブル白馬五竜が発表した人工造雪機の導入は、地域の冬を「いつから始めるか」に踏み込む取り組みだ。
株式会社五竜は、エイブル白馬五竜の2026-27シーズンを11月21日から始めると発表した。白馬村初という人工造雪機を、とおみゲレンデに2基設置し、10月から稼働させる。さらに10月1日、いいもりゲレンデを含む同社が運営するすべてのスキー場施設で、電力の実質再生可能エネルギー100%への切り替えを完了した。雪の供給と電力の調達を一緒に考える点に、今回の発表の重要さがある。
山頂の降雪を待つ営業から、山麓で開始日を決める営業へ


従来は、まとまった雪が降り次第、山頂エリアを先に開けていた。今季は人工造雪機で山麓からのスタートを目指す。山頂エリアのオープンは引き続き降雪状況次第であり、11月21日に全山が滑走可能になるという発表ではない。まず山麓で滑走を始められる環境を準備し、天然雪に応じて山の営業を広げる計画と捉えたい。
編集部が注目するのは、日付を示すことで地域事業者が準備しやすくなることだ。宿泊の販売、飲食店の仕入れ、働く人の配置は、開始日が曖昧なままでは決めにくい。造雪設備による雪の確保を、地域の営業計画を支える手段にしようとしている。もちろん、実際の開放範囲や当日の運行情報は公式案内を確認する必要がある。
人工「降雪」と人工「造雪」は、雪をつくる仕組みが違う
導入機種は樫山スノーテックの「KASHIYAMA ユニット型アイススノー(造雪)システム」、型式はフレークタイプ100TONユニット。発表では、水と空気を噴霧して外気で凍らせる降雪機に対し、造雪機は機械内部で製氷した氷を細かく削って雪をつくる仕組みと説明されている。氷点下にならないシーズン初めにも供給できることが、今回の導入目的に直結する。
| 比較する点 | 人工降雪機 | 今回の人工造雪機 |
|---|---|---|
| 雪のつくり方 | 噴霧した水を冷たい外気で凍らせる | 機械内で製氷し、細かく削る |
| 気温との関係 | 外気の温度・湿度などが造雪条件に関わる | 氷点下でない時期にも雪を供給できると発表 |
| 今回の位置づけ | 寒さを活用した雪づくりの手段 | 山麓で営業開始日を定めるための設備 |
機構の比較はリリースの説明を整理。具体的な運転条件・能力はメーカー仕様によります。


冷媒のオゾン層破壊係数(ODP)は0で、製氷する水に塩などの添加物を加えないという。一方、ODPが0という情報だけで、温暖化への影響までゼロだと判断することはできない。今回示された環境配慮と、設備の運転に伴う電力・水の管理は、それぞれ確認する論点だ。型式にある「100TON」だけから、2基の実運用の生産量や滑走面積を算定することもできない。
「実質再エネ100%」の対象は、運営施設で使う電力
人工造雪機の稼働を含め、同社のすべてのスキー場施設の電力を実質再生可能エネルギー100%でまかなう。一部の供給元は、2025年6月に白馬村で設立された雪だるま電力へ切り替えた。電力調達を環境対策として扱うと同時に、地元のエネルギー事業を支える選択でもある。

ここで対象を丁寧に読みたい。「実質」という表記を外してしまうと発表の意味が変わる。また、電力の切り替えは、圧雪車の燃料や来場者の移動などを含むスキー場事業全体の排出がゼロになった、という意味ではない。今回のリリースでは実質再エネ化の具体的な証書構成までは説明されていないため、その仕組みを推測して断定することは避けたい。
統合後のいいもりも含め、100%へ戻した
五竜は2020年にナイター営業、2023年に施設全体・通年の電力で再エネ化を進めてきた。その後、2025年のいいもりゲレンデの経営統合により、一時的に100%ではなくなり、今回あらためて全施設の切り替えを完了したという。新しい設備を入れるだけでなく、事業範囲が広がった後も電力調達を整え直した点は、施設統合や事業拡張を進める運営者にも参考になる。
同社によれば、いいもりエリアの2025年8月~2026年7月の使用電力量は約662,000kWh。全国平均のCO2排出係数を使った試算では、年間約278トンのCO2削減に相当するとしている。これは比較条件に基づく同社の試算であり、人工造雪機2基の年間消費電力や削減量を示す数字ではない。
初滑りの安定と、雪山を続けるための投資を両立できるか


造雪設備があれば、天然雪を待つ時間の一部を準備期間へ置き換えられる。ただ、設備を導入したことと、持続的に運営できることは別の検証が必要だ。どの範囲を何日早く開けられたか、どれだけの電力と水を使ったか、地域の予約や雇用にどんな効果が出たか。こうした実績が示されれば、他のスキー場も自分の条件に照らして判断しやすくなる。
五竜の取り組みは、雪を確保する技術、エネルギーの選び方、地域の営業計画をつなぐ事例だ。初滑りの一日を安定させるための投資が、雪山を長く楽しめる地域づくりへどう結び付くのか。今季の運用を追いたい。
営業・開放状況:エイブル白馬五竜公式サイト。なお、五竜&Hakuba47共通シーズン券の早割は10月31日までと発表されている。券種・特典は公式のシーズン券案内を確認したい。
出典:株式会社五竜「スキー場・エイブル白馬五竜、11月21日(土)オープン決定!白馬村で初めて人工造雪機を導入」(PR TIMES、2026年10月1日発表)。画像は同リリース掲載素材を使用。料金・販売条件・営業予定は発表時点の情報です。購入・来場前に各施設の公式案内をご確認ください。
本文は発表に基づく事実と、SNOW MAKING編集部の考察を区別して構成。造雪例と過去のゲレンデ写真は、今季の営業開始時の状態を示すものではありません。

