ニセコの「最後の数キロ」を、どうつなぐか。ホテルから飲食店へ、住宅地から職場へ、そして冬には宿からゲレンデへ。東急不動産を事業主体とし、マクニカが車両運行を担う自動運転EVバスの実証が、ニセコひらふ地区で行われた。自動運転という言葉だけで未来を語るより、地域交通の仕事をどこまで引き受けられるかが肝心だ。

まず、何が実施されたのか
2026年8月8~23日に、ひらふ地区の決められたルートで無料運行する実証を実施。車両は最大9人乗り、速度は時速18km未満。運転操作を支援するレベル2で、車内にはオペレーターが同乗した。無人運転やレベル4の営業運行が始まったわけではない。

スキー場経営に引きつけて読む、3つの論点
① 滑る前後の移動は体験の一部。宿とゲレンデ、飲食店と滞在先を結ぶ短距離の移動が不便なら、地域全体の満足度を損なう。実証ルートを見れば、リフトの輸送力とは別に「エリア内をどう回るか」という課題が浮かぶ。これは編集部の見立てであり、今回の実証による利用者増を示すものではない。
② 来訪者だけでなく働く人の足。通勤、生活、夜間の移動を支えられるかは、人材確保や地域の暮らしにも関わる。乗車9人という規模なら大量輸送を置き換えるより、既存交通の届きにくい短い区間を補う設計が現実的だろう。運行頻度や他の交通手段との接続も同時に考える必要がある。
③ 雪国では夏の成功だけで判断できない。積雪、路面凍結、吹雪、除雪後の道幅、停留所の足元。冬は車両と運行管理の条件が一気に厳しくなる。発表では2026年度の冬季に約2週間の追加実証を計画している。ここでの走行と安全管理の知見が、スキーリゾートで使える仕組みを考える鍵になる。

目指すレベル4と、今あるレベル2の距離
事業者が掲げる将来像は、通年でのレベル4自動運転。しかし今回確認できるのは、同乗者がいるレベル2の実証までだ。冬季の走行可能性に加え、運行経費、需要の季節変動、停留所での乗降、緊急時の対応を検証しなければ、継続的な公共交通にはならない。スキー場にとっての問いは「自動運転を導入するか」だけではなく、誰の移動を、どの時間帯に、既存の交通とどうつなぐかにある。

移動が円滑になれば、山の価値はゲレンデの外にも広がる。だが積雪地帯の交通を変えるには、最も厳しい季節に確かめる工程が欠かせない。夏に走った一台の成果を急いで結論にせず、冬の実証と地域の運行設計まで見届けたい。
※本記事はマクニカのプレスリリース(アットプレス)をもとにSNOW MAKING編集部が構成・執筆。効果や事業性に関する記述は編集部の考察で、実証の確認済み成果を意味しません。

