来訪は増えた。リフト輸送は減った。
この二つは矛盾なのだろうか。
ニセコの2025–26冬季レポートを、地域とゲレンデの異なる数字として読む。
ニセコエリアの冬の観光入込数は213.5万人、前年比8.4%増。一方で、ニセコ全山のリフト・ゴンドラ延べ輸送人員は約1,069万人、前年比5.5%減。ニセコプロモーションボードが公表した「2025-26 Winter Report」には、表面上は逆向きに見える二つの数字が並ぶ。スキー場経営の立場では、この差こそ読んでおきたい。
最初に、数字の「数え方」をそろえる
| 指標 | 発表値 | 何を見ているか |
|---|---|---|
| 観光入込数 | 213.5万人(+8.4%) | 倶知安・ニセコ・蘭越の3町への来訪、11~3月 |
| 外国人宿泊者・実人数 | 23万3,632人(+9.4%) | 宿泊した人、10~3月 |
| 外国人延べ宿泊 | 97万3,798人泊(+32.9%) | 泊数を積み上げたもの、10~3月 |
| リフト・ゴンドラ延べ輸送 | 約1,069万人(−5.5%) | 乗車回数の総計。利用者の実人数ではない |
※前年との比較。各指標は対象範囲・期間・単位が異なり、単純に割って「一人あたり滑走回数」を求めることはできません。
入込数には、ゲレンデで滑る以外の滞在も含まれる。輸送人員は同じ人が何度もリフトに乗れば、その都度加算される。「観光客が増えたのに、滑る人が減った」とは、この数字だけでは言えない。発表元は序盤の少雪も輸送減の要因に挙げている。何がどの程度影響したかは、追加データが必要だ。
伸びたのは、ピークよりも「両端」
11月の入込数は前年比42.1%増、3月は17.1%増。1~2月は受け入れ容量に近く、伸びは小幅だったという。一方で11~12月は少雪で、各スキー場の全面オープンは1~2週間遅れたと報告されている。地域への来訪と、滑走可能なコースの広さは別の話だ。
雪の見通しが不確かな時期に需要が先行したら、施設側は何を提供できるか。営業できるコース、移動、食事、代替の体験を含めて、期待と現実を早めに伝える力が問われる。シーズンの長期化は機会を広げるが、運営日数を延ばすだけで収益が増えるとは限らない。
「人」より「泊」が伸びると、地域の仕事が変わる
外国人宿泊者の実人数は9.4%増、延べ宿泊者数は32.9%増。人泊は一人が4泊すれば4と数えるため、差は滞在の長期化を示唆する。来訪者満足度調査では、外国人客の一人あたり消費額が約58万円、日本人宿泊客の約12.5万円と報告された。これは地域旅行中の消費に関する調査結果であり、スキー場のリフト券売上や全来訪者の平均ではない。
長い滞在を受け止めるには、ゲレンデ外の交通、宿泊、飲食、休養日の過ごし方も重要になる。調査にはシャトルバス、リフト待ち、価格上昇への懸念も記される。満足度の高さだけで改善の余地が消えるわけではない。
来場者の数に加え、実際に滑った日数、時間帯別の輸送・待ち時間、宿泊日数、二次交通の混雑を並べてみる。自場の数字であれば、地域需要がゲレンデの体験と売上にどうつながったかを、より具体的に判断できる。
ニセコの結果をそのまま全国のスキー場へ当てはめることはできない。それでも「来た人が増えた」という一つの数字で判断せず、どの月に来て、何泊し、何を体験したかまで見る姿勢は広く応用できる。雪の価値を地域の価値へつなげるには、指標を混ぜずに読むことから始めたい。
出典:ニセコプロモーションボード「2025-26 Winter Report」発表(アットプレス)。指標の解釈と他地域への示唆はSNOW MAKING編集部の見解です。観光入込は2025年11月~2026年3月、外国人宿泊は2025年10月~2026年3月。

