スキー場を巡るたびに、大きな山だけでなく、地元の人が何度も通う小さなゲレンデが気になる。初めてリフトに乗った日、学校の授業で板を履いた日、仕事の後に一本だけ滑った夜。そういう入口が近くにあるから、雪山を好きになれた人は多いはずだ。
峰山 直として、今度は自治体が関わるスキー場を見てみたい。全国にどれくらいあり、どんな役割を担っているのか。数字の読み方に注意しながら、各地の公式情報とともに巡ってみよう。
スポーツ庁の2024年度調査(2024年10月1日時点)では、全国の「スキー・スノーボード場」483施設のうち、公共スポーツ施設は334施設。全体の約69%に当たる。ただし「公共」には市町村立だけでなく都道府県立や公立施設の付帯施設などが含まれ、334施設すべてが市・町・村の直営スキー場という意味ではない。民間スポーツ施設148施設は推計値、学校施設は1施設という集計である。
出典:スポーツ庁「令和6年度 体育・スポーツ施設現況調査報告」表2(PDF)。施設分類と設置主体の区分に基づく数字で、2026-27シーズンの営業施設数を表すものではない。
「公営」は、ひとつの運営形態ではない
市や町が設置し職員が運営する施設もあれば、自治体の施設を企業やNPOが指定管理者として運営する施設もある。リフト、レストラン、周辺施設の担い手が異なる例もある。「町営」「市営」という名前だけでは、現場を支える人の顔は見えてこない。
たとえば長岡市営スキー場の管理運営は指定管理者が担う。松本市の野麦峠スキー場も指定管理者制度を導入し、市が索道設備の改修を計画している。公と民、地域の団体が役割を分けて「滑れる場所」を維持しているのである。
県別に見る、自治体が関わるスキー場
以下は全国の全件一覧ではない。自治体の施設案内・条例・経営資料で関与を確認できた代表例15施設を、各施設の公式ページとともに紹介する。規模欄はコース数、リフト数、滑走距離など公式に確認できた指標のみ記載した。設置数と稼働数は異なることがあり、翌季の営業・料金は各リンク先で確認してほしい。
| 県 | スキー場・公式情報 | 規模の目安 | 地域との接点 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 美幌町・リリー山 | ペアリフト1基/滑走約450m | 市街地に近いファミリーゲレンデ |
| 北海道 | 倶知安町・旭ケ丘 | ペアリフト1基/2コース | 町内の中学生以下はリフト無料。歩くスキーも |
| 北海道 | 長沼町・北長沼スキー場 | リフト3基/4コース(公式案内) | 緩斜面とナイターを備える町のスキー場 |
| 北海道 | 佐呂間町営スキー場 | 町内の身近なゲレンデ | スキー、ボード、そりを幅広い世代が利用 |
| 北海道 | 羽幌町民スキー場「びゅー」 | ファミリー向けゲレンデ | ナイターと町内からのバス便 |
| 青森 | 七戸町営スキー場 | ペアリフト1基・ポニーリフト1基(町の仕様書) | ナイターを実施する町の施設 |
| 岩手 | 花巻市・鉛温泉 | ペアリフト2基運行/別に1基運休 | 温泉地とつながる市のスキー場 |
| 岩手 | 西和賀町・湯田 | 町営施設(リフト運行状況に注意) | ジュニア大会の会場 |
| 新潟 | 長岡市営スキー場 | 市街地から近いゲレンデ | 指定管理者による運営 |
| 新潟 | 加茂市・冬鳥越 | Tバーリフト2基 | そり専用コース・雪遊び広場も |
| 新潟 | 魚沼市・小出 | 市の条例上ペアリフト3基 | 地域NPOが指定管理 |
| 長野 | 松本市・野麦峠 | 12コース(市の評価資料) | 旧村営を引き継ぎ、市が設備更新に関与 |
| 石川 | 金沢市営・医王山 | 初心者向け・中上級向けのゲレンデ | 市民が山のスポーツに触れる場 |
| 静岡 | 静岡市・リバウェル井川 | 標高約1,400m/緩斜面 | 冬の雪上体験と夏のマットスキー |
| 鳥取 | 若桜町・わかさ氷ノ山 | 5コース(公式サイト) | 町の関連施設とリフト事業者の協働 |
※所在地がその自治体にあるだけの民間スキー場は含めていない。わかさ氷ノ山は町営施設と民間事業者の役割が分かれる例として掲載。湯田スキー場は2025-26シーズンに一部リフトの故障による運休を町が告知しており、次季の状況は要確認。各行の数字は最大運行本数を保証するものではない。
一本のリフトが、次の滑り手をつくる
倶知安町・旭ケ丘スキー場の公式案内には、町内在住の中学生以下の無料利用、町民無料デー、そり専用コース、クロスカントリーコースが並ぶ。世界に知られる雪山エリアにも、日々の練習や最初の一歩のための場所がある。
町が設置する北長沼スキー場にも、家族で訪れやすい緩斜面やナイターがある。身近な雪山で繰り返し滑れることは、地域の子どもや仕事帰りの大人がスキーに親しむ入口になる。
加茂市・冬鳥越スキーガーデンでは、2025-26シーズンの案内で、市や教育委員会主催の事業、認められた指導者が引率する児童生徒のリフト利用を無料としている。西和賀町の湯田スキー場にはジュニア大会がある。こうした役割は、リフト券売上だけでは測りきれない。「初めて滑れた」「次も滑りたい」――その経験をつくる場だからだ。
滑り手として気になるのは、①初めての人も入りやすい斜面、②学校やクラブで通える距離、③仕事帰りにも滑れる機会、④設備を安全に使い続けられるか。入込客数だけでは測れない、日常に雪がある価値を見たい。
守るには、続けられる形が必要だ
「地域の宝だから残す」で議論を止めてはいけない。索道の検査や部品更新、圧雪、降雪待ちの人員配置には費用がかかる。雪が少なければ営業日も限られる。松本市は野麦峠スキー場について、地域振興を担う一方、索道の更新を計画的に行う経営戦略を示している。西和賀町のリフト運休も、設備維持が机上の話ではないことを伝える。
では、何を残し、何を変えるのか。初心者に必要なエリアを絞る。学校利用の時間帯を確保する。広域のスキー場と役割分担する。指定管理者や地域の団体と一緒に運営方法を組み直す。大規模リゾートと同じ商品を目指すのではなく、その町だから担える役割を明確にすることが、持続可能性を考える出発点になる。
雪の文化は、近くのゲレンデから始まる
旅先の大きなリゾートで滑る日も好きだ。でも、一本のリフトがある近くの山で「次はもう一本」と思えた経験も、滑り手を育てる。学校の授業、放課後、仕事帰り。何度も通える場所があることを、私たちはもっと大事にしていい。
自治体、運営者、地域の人たちが次の世代にどんな雪の体験を渡したいのか。その答えを探し続けることこそ、小さなスキー場の価値を未来につなぐ仕事ではないだろうか。
資料確認:施設情報は2026年9月時点で確認した公式公開資料を基に整理。2026-27シーズンの営業日や運行設備は未確定の場合がある。各施設のリンク先で最新情報をご確認ください。


